広い世界へ、泳いで渡れ!(大宮晋平さん 長崎西高60回生-2008年卒)

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今回お話をうかがったのは、60回生の大宮晋平(おおみや・しんぺい)さんです。野球部で過ごした高校時代のお話から大学生活、お仕事のことまで色々とお話を聞かせてくれました。

お話を聞いたのは、ちょうど在京西高同窓会の新入生歓迎会が開催される日。会がはじまる前の朝、新宿のカフェで、話が大いに盛り上がりました。

こんな人に読んでほしい

・ビシッとスーツを着て働くのって、かっこいい! と思う人

・中高6年間、活躍はしていないけど部活をがんばった!という人

・商社の仕事に興味がある人

大宮晋平(おおみや・しんぺい)さんのプロフィール

・東長崎中学校出身

・野球部に所属

・九州大学農学部へ進学

・新卒で伊藤忠商事へ入社し、現在も勤務中

野球「部」をやった6年間

ーー本日は暑い中、ありがとうございます!そしてご結婚おめでとうございます!

(大宮さん・以下敬称略)ありがとうございます!暑いですね!今日はよろしくお願いします。

ーーでは早速ですが、中学生の頃のことを教えてください。

(大宮)はい。中学は東長崎中学校でした。55回生の中村翔平さんの妹さんと同級生です。

中学では3年間野球部に所属していました。ポジションはファーストだったんですが、試合にはほとんど出ていませんでしたね。

あとは生徒会の副会長もやっていました。

ーーそうなんですね!高校時代はどうでしたか?やっぱり野球をやりたくて西高に入ったんでしょうか?

(大宮)いやいや、全然(笑)。試合にも全然出ていなかったし、野球を続けるつもりは正直あまりありませんでした。でも中学の野球部のひとつ上の先輩が西高にいて、「大宮、野球部はいるよな。」と。そうなると返事は「はい!」しかありませんよね(笑)

だから野球部に入部した時期は、同期の中では僕が最後でした。

西高の野球部は春休みから練習に参加しているメンバーもいたりしたので、遅れての参加はきつかったですね。何度も退部しようと思ったこともあります。

でもそのたびに先輩や同期たちが引き止めてくれて。「今やめて本当にお前のためになるのか。」と。それで結局3年間続けてしまいました。野球部の同期メンバーとは今でもすごく仲がいいです。私の結婚式にも声をかけて、ほぼ全員が参加してくれましたね。

ーー野球部の結束力はすごいですよね。

(大宮)はい。練習は厳しかったし、野球部に入ってから私も成績が落ちてしまったんですけど、同期は結局一人もやめませんでした。私の人間性の基礎は、野球部で学んだことも多いです。上下関係、礼儀、堂々と話す、人間力とか。

僕は結局中高の6年間一度も公式戦には出場してません。「野球」という競技はやれず、「野球部」という別の競技をやっていた感覚です。でもそこで学んだ人間力は、確実に今につながっています。

ーーなるほど、さすが西高野球部です。僕はサッカー部だったんですが、サッカー部にはあまりない文化ですね。

(大宮)そうですね、野球部に入ってよかったと思います。練習は厳しかったし、第2グラウンドは治外法権で大変でしたけど(笑)

ーー深くは聞かないことにしましょう(笑)

よし、関東へ!と思ったけれど・・・

ーーでは、大学受験のことについても教えてください。

(大宮)大学は九州大学の農学部に進みました。

ーー九州大学は第一志望ですか?

(大宮)それもまた実はいろいろとあって。両親からは長崎で医歯薬系の道に進んでほしいと言われていました。成績からすると長崎大学薬学部かなあ、と思って受験勉強をしていたのですが、あまり気乗りがせず・・・。当時の薬学部のイメージが、薬剤師になって、薬局で処方箋を出して、というぐらいしか知らなかったので。

それよりも、野球部のような、チームで仕事をして、みんなで達成感を味わえるような仕事がしたいなと漠然と思っていました。でも僕は親も公務員だったというのもあり、自身も高校時代は野球ばかりで世の中のことを全然知らない。自分の世界を広げるためにはやっぱり関東圏に行きたいなと思うようになりました。

当時、高校2年時に研修旅行といって、筑波大学に行く機会がありました。そこで筑波大学を見て、「よし、ここだ」と。それで面談で先生に「筑波大学に行きたいです」と言ったら、「ダメだ」と言われたんです。

ーーなんと!それはびっくりです!

(大宮)はっきりダメと言われてはいないかもしれませんが、私はなんとなくそういう風に受け取ったんですね。先生は「九州大学がいんじゃないか」と。そして親も「関東はさすがに・・・」という反応でした。

長崎を出て視野を広げるという意味では福岡でもよかったので、最終的に九州大学の農学部を受けることにしました。

「野球」に燃えた大学生活

ーーなるほど。福岡での大学生活はどうでしたか?

(大宮)楽しかったですね。中高6年間「野球部」はやったけど、「野球」はしてない!野球がしたい!と思ったので、サークルや部活を見て回りました。野球サークルは楽しそうでしたが、ちょっと物足りなく感じました。硬式野球部は人数も多くてレベルお高くて、「また野球部生活になりそうだな」と思いやめました。そして見つけたのが、「準硬式野球部」でした。

準硬式野球部は、四年生が抜けると部員が12人。「よし、これなら出られる」ということで(笑)

無事に試合に出ることができて、大学ではピッチャーをやりました。打たれまくったけど楽しかったですね。「野球を始めて7年、俺やっと野球できてる!」というのが何より楽しかったです。

ーーいいですね。僕も中高とほとんど公式戦に出てないので、気持ちがすごくわかります。準硬式野球部というのがあるんですね。

(大宮)はい、実は準硬式野球は大学スポーツとしてはとても人気で、大学の部活動の競技人口も想像よりもずっと多いんです。ラクロス部などもそうなのですが、基本的に学生主体で運営をする部が多いことと、医学部や歯学部の野球部は準硬式のところが多いですね。

ーー学生主体の運営というのは楽しそうです。活躍できましたか?

(大宮)ピークは大学3年時の七帝戦でしたね。東大相手に160球の完投勝利。ベストナインに選ばれました。最終学年は監督と主将を兼務したり、九州の準硬式野球連盟の副幹事長もやりました。大学野球では、受け身ではなく主体的に行動することを学びました。自分で動いて、変えていくというか。

就職活動で出会った、商社という仕事

ーー充実した学生生活だったんですね。就職に向けての活動も早いうちからされていたんでしょうか?

(大宮)それが、野球も学生生活も楽しすぎて全然で。高校生の頃に思っていた、「チームワークで大きな課題にチャレンジするビジネスマン」という夢とか、広い世界を見て自分の視野を広げるんだ!という目標もすっかり忘れていました(笑)

理系学部(農学部)だったので漠然と大学院に進学して、食品メーカーに就職するのかなあと思っていたのですが、一応リクルートスーツだけは買ったので、合同企業説明会に参加してみることにしたんです。そこでたまたま阪和興業さんという企業が出展されていて、商社という仕事を知りました。

話を聞いてみて、これは面白そうだぞ、とワクワクしたんです。こういう会社で、こういう人たちと働いたら楽しそうだと思いました。そこで高校生の頃のことをやっと思い出したんです(笑)

ーーでは就活のスタートはそれほど早かったわけではないんですね。

(大宮)はい。大学3年の10月1日に就職活動スタート!という感じでしたが、私が開始したのは10月末からでした。合同企業説明会のあと商社について色々と調べたり人にあって話を聞いたりして、商社を志望するようになりました。調べていくうちに「これこそ最強のサラリーマンだ」と思いました。バイト代をためて、東京に2泊3泊と行って、その間ひたすらOB訪問で先輩社会人の人たちに会いまくるという。それで、縁あって伊藤忠商事に内定をいただけました。

総合商社ってどんな仕事?

ーーさすがの行動力ですね・・・!伊藤忠商事、いわゆる「5大総合商社」と言われる企業ですが、学生の立場からするといまいち仕事へのイメージがつかめなかったりもします。どんなお仕事をされているんでしょうか?

(大宮)そうですよね。まず商社の商売の基本は、トレーディングです。物を売り買いすること。海外と日本の間だったり、日本国内の生産者とメーカー、メーカーと小売だったり。

そこからはじまって、事業投資も行います。売り買いだけでなく、こちらから投資もして事業そのものの規模を大きくしていこうということです。

私は食品関連の部署にいます。投資先は食品の卸企業とコンビニ。商社勤務なのでガンガン海外を飛び回るのだろうなと思っていたのですが、社歴11年、ほとんどずっと国内にいます。11年中9年は、コンビニ事業に関わっています。

ーー確かに商社というと、アフリカや南米や中央アジアにも行ったりなど、世界中で働かれているイメージがありますね。

(大宮)はい。就活のときに面接でパスポートを持ってないと行ったら、驚かれました。「でも祖母の実家の対馬から韓国を見たことがあります!」という話をしたんですが、スベりましたね(笑)

ーー(笑)9年間同じ事業に携わっているということですが、商社はひとつの事業に関わる期間は長いのでしょうか?

(大宮)商社の仕事って、現場のけっこう細かいところまで入り込んでいくことが多いんですね。誰も持っていない情報を引き出したり、他社には真似できない付加価値を出すためには、業界についての深い知識や人脈が必要なんです。そのため、やはり1つの事業に携わる期間は長くなりがちですね。組織も基本縦割りの傾向が強いです。

ーーそうなんですね。食品関連の部署への配属はどのようにして決まったんでしょうか?中には思っていた業界と違う業界に配属されて、「商材に興味が持てない」とう場合もあるかと思うのですが、そのへんはどうでしょうか?

(大宮)大学4年の10月くらいに配属面談があります。いろんな部門の方と面談して、自分が希望する部門を第4希望くらいまで出します。そして12月頃に配属の結果が書留で届きました。そこで私は食品部門配属にきまりました。

配属に関しては「この商材まったく興味がわかない」と言っていた同僚が、1年もすると「面白くなってきた」と言っていたりもするので、やってみないとわからないよ、ということも多分にありますね。

個人的には、長続きするのは、商材そのものへの興味よりも、商流を育てる仕組みづくり、に興味を持てる人なんじゃないかなと思います。

僕が所属している食品という業界は、ひとつひとつの事業の規模が小さいので、担当する人の個性が出やすいんです。原料や製品をどこから仕入れてどこで作って、どこに卸すか。その絵を自分で描いて、実現する。その過程がやっぱり面白いですね。

ーーなんだかわかるような気がします。商材への愛を貫ける人も、それはすごい才能ですが、事業を作ったり、人を育てたりすることへ興味を持てる人も大切ですよね。他に商社の仕事をしていてい面白いと感じたことはありますか?

(大宮)いっぱいあるんですが、例えば、里芋です。

ーー里芋?

はい。ある時取引先のコンビニから国産の里芋で惣菜をやりたい、という要望が来ました。それで先輩と宮崎へ行って生産者と会って条件をとりまとめてきました。里芋のサイズはこのくらいは許容してね、という条件だったりとか。それで進んでいたのですが、一旦コンビニ側が飲んだはずの条件を、やっぱりどうにかならないか、と相談が来たんです。

そこでまた農地へ飛んで、里芋の加工場を見に行きました。ベルトコンベアみたいなラインをゴロゴロ転がして里芋を洗うんですが、大きすぎる里芋はラインから飛びはねちゃって難しいから大きさ変更はしんどいとか、そんな話を聞きながら解決策を考える。そういう細かいところに踏み込んで知っていくのも、商社の面白さかなと思います。

ーー里芋の加工なんて、考えたこともないですね、なるほど(笑)

里芋工場を視察中の大宮さん

(大宮)あとはやはり、どんな人と繋がれるか、という部分が面白いですね。

商社の営業って、資格や技術があるわけではなく、食品を生産しているわけでも無い。会社の看板がなければ話も聞いてもらえないのでは・・・と思います。だからこそというか、誰かが困った時のため、自分が困った時のために、どんな人と知り合っておけるかが大切だと感じます。

言い換えると、信頼関係を築く力が大切です。中高大と野球部で学んだ人間性、自分で考えて能動的に動く力、そういうものがすごく活きる環境だと思います。

トレーディングは、二人三脚で足を結ぶようなものだ。と例えたりもします。信頼関係と、それを作るための人間性と行動力が大事ですね。

現役高校生へのメッセージ

ーーでは最後に、現役高校生へのメッセージをお願いします。

(大宮)そうですね、自分が高校生だったとして・・・

いろんな大人の話を聞く機会を大事にしてほしいなと思います。高校生の頃って、身近な大人というと先生と親ぐらいだと思うんです。西高でも講演会などを開催してくれていますが、そんな風にいろんな大人の話を聞く機会は意外と大事です。ぼんやりとでもいいので自分の将来をイメージする機会になると思います。

特に就職活動は、いろんな話を聞ける機会。就活生というだけでいろんな業界の先輩が会って話をしてくれますし、西高の在京同窓会を活用するのもすごくいいと思います。

僕も就活のスタートが遅かった人間なので、焦りすぎる必要はないと思いますが、就活をいろんな大人の話を聞くことができる機会ととらえて活動できると、見え方が変わるのではないかと思います。

ーーいろんな大人の話を聞く。今になって思いますが、大事ですよね・・・。本日はありがとうございました!

(大宮)こちらこそ、ありがとうございました!新入生歓迎会に向かいましょう!

余談 伊藤忠商事の社風について

この記事を読んで商社の仕事が気になったという方へ。伊藤忠商事の社風について、大宮さんがこんなたとえ話を教えてくれました。

たとえば、激流の河の向こうに宝物が見えたとして、どうやって取りに行きますか?というと、伊藤忠商事は『泳いで渡る』というのがいいたとえですね。100人行って、99人が流されたとしても、1人がたどりつけばいい。(個人主義、失敗もするけれど、速い)という雰囲気があるような気がします。

こちらの話、その後の歓迎会に参加された別の商社の方にも聞いてみたらまた違う解答をされていて、とても面白かったです。同じ業界であっても、社風ってけっこう違うんですね。

社風が合うかどうか、というのも仕事を考える上で大切な視点だなと感じました。

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